中小企業における取締役会の開催
取締役会という機関とその権限
取締役会とは、株式会社における機関の一つであり、定款で定めることにより設置される、合議機関のことです。
合議機関ですので、取締役会を設置するためには3人以上の取締役が必要とされ、そのすべての取締役で取締役会を構成します。
この取締役会では、次のような職務を行います。
・取締役会設置会社の業務執行の決定(合議機関としての意思決定。重要でないものは各取締役に委任することも可能。)
・取締役の職務の執行の監督
・取締役の中から代表取締役を選定及び解職
取締役会の運営
取締役会の招集権者、招集手続
取締役会は、各取締役が招集する、と会社法に規定されていますが、実際には代表取締役が収集する旨が定款に記載されていることが多いと思います。
また、あらかじめ取締役会の決議で、取締役会を招集する取締役を定めておくこともできます。
取締役会を招集する者は、原則として1週間前までに各取締役や各監査役(会計監査限定監査役は除く。)に通知を出さなければなりません。
ただし、この期間は定款で短縮することができますし、取締役及び監査役(会計監査限定監査役は除く。)の全員が同意すれば、招集手続無く開催することもできます。
この取締役会ですが、どの程度の開催頻度が必要なのでしょうか。
この点については、代表取締役や取締役会で業務執行取締役として選定された取締役の取締役会に対する職務執行報告義務が、3か月に1回以上と定められています。
つまり、最低でも3か月に1回は取締役会を開催する必要があります。
取締役会の決議
取締役会の決議は、原則として議決に加わることができる取締役の過半数が出席をし、その過半数をもって行います。
定款で定めておくことにより、この決議の要件をより厳しくすることは認められていますが、易しくすることは認められていません。
どういうことかと言いますと、
・取締役全員が出席し、その過半数の賛成をもって承認可決
・取締役の過半数が出席し、その全員の賛成をもって承認可決
・取締役の全員が出席し、その全員の賛成をもって承認可決
というのは認められますが、
・出席した取締役の過半数の賛成をもって承認可決
・取締役の3分の1以上が出席し、その過半数の賛成をもって承認可決
というのは認められていません。
また、出席できない取締役が、他の取締役に決議を委任したり、自分の部下を代理人として出席させることも認められていません。
これは、株主総会において選任された取締役と株式会社とは、高度な委任関係にあり、その者自身が持つ知識や経験、能力等が会社運営において発揮されることが期待されています。
取締役自身が取締役会に出席をし、提案された議案について知見を示し、議論決議することが求められています。
しかしながら、多忙な取締役が一同に会することが難しい場合も多々あると思います。
このような場合、どうしたら良いのでしょうか。
取締役会のリモート開催(テレビ会議システム・Web会議システムを利用した取締役会)
取締役会の開催にあたり、取締役が開催場所で物理的に一同に会することまでは求められていません。
海外・遠隔地勤務のため出席が困難な場合や現在のコロナ禍のように出社制限がされている場合もあると思います。
こういった場合、物理的に出席できない取締役については、テレビ会議システムやWeb会議システムを利用して参加することが考えられます。
もちろん、取締役の全員がテレビ会議システムやWeb会議システムを利用して取締役会を開催することも可能です。
「各取締役の音声と画像が即時に他の取締役に伝わり、適時的確な意見表明が互いにできる仕組み」が構築できていることが必要であり、この要件を満たしていれば適格開催と言えます。
この場合、議事録にはその旨を記載することになります。
みなし決議、書面決議
今までの話は、取締役会が開催されることを前提としていましたが、あらかじめ定款で定めておくことにより、そもそも取締役会を開かずに決議をすることも認められています。
これをみなし決議や書面決議と呼び、会社法第370条に規定があります。
このように定款で定めておけば、全員同意が見込まれる議案については、書面決議によって取締役会の決議があったものとみなされます。
取締役会議事録
取締役会の議事については、議事録を作成しなければなりません。
この議事録は書面又は電磁的記録で作成する必要があり、書面の場合には、出席取締役及び監査役の署名又は記名押印、電磁的記録の場合には電子署名が必要となります。
この議事録は、取締役会の日から10年間本店に備え置かなければならず、みなし決議の場合も同様です。
リモート開催をした場合には、議事録には次のように記載することになりますのでご参考になれば幸いです。
開催場所:当社本店会議室又は○○県○○市○○区〇丁目〇番地 議長宅
議事の経過:冒頭:代表取締役○○は定款の規定により議長となり、本審議に先立ち、テレビ電話会議システムにより、出席者が一同に会するのと同等に適時的確な意見表明が互いにできる状態であることを確認したうえで、開会を宣し、議事に入った。
議事の経過:末尾:以上、テレビ電話会議システムを利用した取締役会は、終始異状なく全議題を終了したので、本日の議事を終了し、〇時〇分閉会を宣した。
テレビ電話会議システムにより出席した取締役の記載:以下の取締役は、テレビ電話会議システムにより本取締役会に出席した。
取締役 ○○、取締役△△、取締役□□
まとめ
近時、社会の在り方は大きく変わってきています。
それは、働き方において特に顕著なのではないでしょうか。
株式会社の経営方針を大きく左右する取締役会の決議においても、以前のような一同に会して会議をする形から変化しているのではないでしょうか。
機動的な会社運営に対応するためにも、自社の取締役会決議について一度ご確認されるのも良い機会なのではないでしょうか。