供託手続

供託の制度、その目的

「供託」と聞いてパッとイメージすることができる人は少ないと思います。どちらかと言えば「信託」という言葉の方が良く耳にされるのではないでしょうか。同じ「託す」という文字が使われておりますが、まったくの別物です。

供託というのは、金銭や有価証券などを国家機関である「供託所」に提出し、その管理を委ね、最終的には「供託所」がその財産をある人に取得させることによって、一定の法律上の目的を達成しようとするために設けられている制度です。

ただし、供託が認められるのは、次のように法令の規定により、供託が義務付けられている場合または供託をすることが認められている場合に限られています。


例:民法第494条(供託)

弁済者は、次に掲げる場合には、債権者のために弁済の目的物を供託することができる。この場合においては、弁済者が供託をした時に、その債権は、消滅する。

一 弁済の提供をした場合において、債権者がその受領を拒んだとき。

二 債権者が弁済を受領することができないとき。

2 弁済者が債権者を確知することができないときも、前項と同様とする。ただし、弁済者に過失があるときは、この限りでない。


上記の例の供託のことを、弁済のためにする供託、「弁済供託」といいます。

ちなみに、「弁済」とは、債務者が債務の給付を実現することで、債権の本来的な消滅原因のことをいいます。

要は、借りていたお金を返すことや工事代金を支払うことです。

例えば、あなたが仲の良い友人からお金を借りていたとします。

返済の約束の期日が到来したので、友人の元を訪れお金を返そうとしたら、いきなり「お前の顔なんて見たくない、帰れ」と突き返されてしまった場合、どうしたら良いのでしょうか。

返しに行ったのに受け取らなかった相手が悪い、と放っておいたら良いのでしょうか。

でも良く考えてみてください。

お金を借りていたことは事実であり、返していないこともまた事実なのです。例え相手が受け取りを拒絶したとしても、借りていたお金を返すという債務は消えません。

このような困った状況で認められているのが「弁済供託」という手続きになります。

この供託手続きをすることで、あなたはお金を返したことになり、債権は消滅することになります。

このような供託手続きについて、皆さんの代理人となって代わりに手続きを行うことが司法書士の業務の一つとなっています。