商業登記の制度と目的

世の中には、たくさんの会社があります。

これらの会社が、どのような名前で、どんな事業を行っており、本社や支店がどこに在って、資本金がいくら位あるのか、また取締役などの役員にはどういう人達が就いているのかなどを、誰でも知ることができるようにしておくこと(「公示」といいます)が商業登記という制度になっています。

これによって会社は信用を維持することができますし、取引をする際においても、安全性や円滑性を高めることができます。

商業登記簿と登記事項

会社に関する取引上重要な事項について、特に「公示」しておくことができる事項は、「商業登記簿」の種類に従って、商業登記規則で定められています。

この登記できる事項のことを「登記事項」といい、法務局の「商業登記簿」にそれぞれ区分けされて登記記録として保存されています。

なお、先ほども述べたように、この「商業登記簿」には種類がありますが、ここでは会社に関する「商業登記簿」のことを「登記簿」と呼ばせていただきます。

「登記簿」というように、以前は紙の簿冊に記録されていましたが、現在はコンピュータ化されデータとして保存されています。

さて、この法務局に備えられている「登記簿」は「公示」されているものです。

誰でも見ることが可能でないといけませんが、データは法務局のコンピューターの中にあります。

では、どうやってこの登記記録を見るかといいますと、「登記事項証明書」というものを法務局に発行してもらうことにより確認します。

日本にある全ての会社は必ず登記されているので、どこの法務局に行っても好きな会社の「登記事項証明書」を取得することができます。

会社は設立登記をすることで成立する

先ほど全ての会社が登記されている、と言いましたが、どうしてそう言い切れるのでしょうか。

これは、会社を設立するには、まず設立登記という登記を申請しなければならないからです。

「会社は、その本店の所在地において設立の登記をすることによって成立する」(会社法第49条、第579条)と法律で定められているからです。

ちなみに、「会社」というのは総称であって、「株式会社」と「持分会社(合名会社・合資会社・合同会社)」のことをいいます。

会社の種類について詳しく知りたい方はコチラ

ですので、日本国内にある株式会社と持分会社は成立した段階で、必ず登記がされています。

登記事項に変更があった場合・・・勝手に登記簿が書き換わるのか?

このように商業登記というものは、会社の信頼を高めたり、取引の安全を図るといった目的がありますので、いつまでも情報が更新されないままだと困るのです。

例えば、会社を設立した後、順調に事業が軌道にのってきたので、新しいオフィスを借りて、事業も多角化していこう、となったとします。

オフィスの移転先や多角化に伴う事業目的の追加自体は、取締役会や株主総会で決めることになります。

ところで、会社の本店所在場所や事業目的というのは「登記事項」です。

ですので、新しい本店の場所や追加した目的内容など変更があったことを「登記簿」に記録していかなければ、商業登記という制度本来の目的を果たせなくなるのです。

この場合、放っておいても法務局が勝手に調査をして、「登記簿」を書き換えてくれるのでしょうか。

答えは否、です。

会社内部で決定されたことを法務局が調査できる権限はありません。

そこで、法律によって、「登記事項」に変更があったときは、二週間以内に登記しなければならないと定められているのです。(会社法第915条)

こういった設立登記や変更登記をについて、皆さんから相談を受けたり、必要な書類を整えたり、代理して申請することが司法書士のお仕事の一つであります。