合同会社とは

合同会社とは、平成18年5月に施行された会社法により設けられた会社の一類型になります。

会社法では、株式会社、合名会社、合資会社及び合同会社のことを会社であるとし、さらに株式会社以外の会社を持分会社であるとしています。

この合同会社は、株式会社や他の持分会社と同様に、営利を目的とした社団(人の集まりのこと)法人になります。

内部的には民法上の組合のようなもので、原則として総社員の同意で定める定款による自治が広く認められています。

合同会社の社員とは

合同会社の社員とは、出資者であり、原則として会社の業務を行う者のことをいいます。

持分会社の社員は、それぞれ会社の種類によって特徴がありますので、ここでは合同会社の社員の特徴を挙げていきます。

合同会社の社員の特徴

  1. 間接有限責任・・・合同会社の社員は、会社が債務超過等により会社財産のみでは債務の履行ができない場合においても、債権者から履行の請求を受けることはありません。なぜなら合同会社の社員は、入社する際に出資の履行を終わらせているからです。このように社員としての責任は出資額を限度とし、その出資の履行も終わっているので、債権者に対して直接責任を負わないことを「間接有限責任」といいます。株式会社の株主と同様となっています。
  2. 持分単一主義・・・合同会社の社員は、定款に記載され、出資の履行をすることにより「持分」を取得し社員になります。この「持分」というのが社員という地位そのものである「社員権」であり、出資額に対応した会社財産に対する「財産権」となります。「社員権」としての「持分」は、定款で別段の定めをしていなければ、出資額に関係なく各社員が等しく有することになり、会社の業務執行等の意思決定については、社員全員の同意や頭数の多数決になります。株式会社では、基本的に持ち株数で決せられるので、大きく異なる点となっています。
  3. 法定の合議体の不存在…株主総会や取締役会等の法律で定められた合議体が存在しません。定款で社員総会や役員会等を設けることは可能ですが、原則としては社員全員の同意や頭数の多数決で業務執行等の意思決定を行うことになります。
  4. 所有と経営の一致・・・はじめに記載いたしましたが、合同会社の社員は、出資者であり、原則として業務を行う者です。定款で業務執行を行う者を社員の中から指定することは可能ですが、基本的に社員は経営に携わることになります。また、業務執行社員を定めていても、定款に別段の定めがない場合、支配人の選任や解任は社員の過半数で決定しなければばりませんし、全ての社員はいつでも業務や財産状況の調査ができます。
  5. 属人性・・・株式会社の社員、すなわち株主と違って、合同会社の社員はその人の個人性に強く帰属します。株式は、細分化された持分所有の一単位であり、同一内容の株式の持ち株数をもって支配力が決定される資本性の出資形態になります。そのため原則として譲渡は自由ですし、相続や合併等があれば当然に承継されます。これに対し合同会社の社員の持分は、定款で別段の定めがなければ、他の社員の全員の承諾がないと持分の全部又は一部を譲渡できませんし、相続や合併があっても承継されずに退社することになります。社員の個人性が重要視されているあらわれになります。
  6. 名簿不存在・・・社員の名簿について法定されていません。株式会社においては、株主名簿の備え置きや記載事項は法定されています。合同会社の社員は、定款の記載事項になっているので、あえて名簿の作成義務を置かなかったとも考えられます。

社員の加入

社員の加入

合同会社の社員を加入するためには、社員となろうとする者との入社契約を前提とし、その社員に係る定款を変更しなければなりません。

なお、定款変更時までに出資の払込みや給付が終わっていない場合には、履行が完了した時に合同会社の社員となります。

これは「合同会社の特徴 1.間接有限責任」で述べたとおり、合同会社の社員は出資の履行が終わっていることが社員の前提条件だからです。

社員加入時の登記の必要性

合同会社で登記されるのは「業務執行社員」と「代表社員」になります。

つまり、加入した社員が業務執行社員として定款に記載されない場合には、社員について登記をする必要はないということです。

なお、代表社員は業務執行社員であることが前提となっています。

注意点は、業務執行社員ではない社員の加入によって資本金が増加する場合には、資本金の額の変更登記が必要となることです。

社員加入時の資本金

合同会社の社員加入時にあらたにされた出資について、全額資本金に計上することもできますし、全部又は一部を資本金に計上しないとすることもできます。

株式会社では最低でも2分の1は資本金に計上しなければならないので、大きな違いといえます。

この出資の振り分けについては、原則として業務執行社員の過半数で決することになります。

その結果、資本金として1円でも計上する場合には、資本金は合同会社の登記事項ですので、変更する登記申請をしなければなりません。

なお、資本金として計上しなかった出資については、すべて資本剰余金に振り分けられることになります。

資本金の額の変更登記

上述のとおり、資本金が1円でも増加した場合、資本金の額の変更登記を申請する必要があります。

申請書の内容は下記のようになっていますので参照ください。

                    合同会社変更登記申請書

1.商号       合同会社すずかぜ

1.本店       富山県魚津市本新町〇番〇号

1.登記の事由    資本金の額の変更

1.登記すべき事項  別紙のとおり

1.課税標準金額   金〇〇万円(増加した資本金の額)

1.登録免許税    金〇万円(※課税標準金額の1000分の7、最低3万円)

1.添付書類     総社員の同意書 1通

           出資に係る払込み又は給付があったことを証する書面 1通 

           業務執行社員の過半数の一致があったことを証する書面 1通

           資本金の額の計上に関する証明書 1通

           委任状(代理人が申請する場合) 1通

業務執行社員の指定

合同会社の社員は、定款に別段の定めがある場合を除き、合同会社の業務を執行します。

社員が2人以上の場合には、合同会社の業務は、定款に別段の定めがある場合を除き、社員の過半数をもって決定します。

なお、常務に関しては各社員が単独で行うことができますが、完了前に他の社員から異議が出た場合はこの限りではありません。

このように、原則として各社員が合同会社の業務を執行することになりますが、定款で業務執行社員を定めることにより、所有と経営が一致しない社員を作り出すことができます。

これにより、株式会社における株主のように出資のみを行い、会社の経営には参加しない社員の存在も許容されています。

ただし、「合同会社の社員の特徴 4.所有と経営の一致」でも述べたように、支配人の選任や解任、業務や財産の調査などは、定款で別段の定めがない限り、社員の過半数や単独で行うことになります。

ここで誤解のないように説明しておきますと、定款で業務執行社員を定めていない場合には、社員全員が業務執行社員として登記されることになります。

合同会社の社員に関する登記事項は、「業務執行社員」と「代表社員」です。

定款で業務執行社員を定めていなければ、原則通り各社員がそれぞれ業務を執行しますので、社員全員が業務執行社員として登記されます。

さらに、定款又は定款の定めに基づく社員の互選によって業務執行社員の中から代表社員を定めていない場合には、その業務執行社員の全員が代表社員としても登記されることになります。

代表社員の指定

業務執行社員は、合同会社を代表し、業務執行社員が2人以上の場合には、各自が合同会社を代表することになります。

このように各自代表となっている代表権を、特定の者に指定したい場合、定款又は定款の定めに基づく社員の互選で代表社員を定めることになります。

この場合において、社員の互選で選出された代表社員は、就任承諾書が必要であるとされています。

合同会社の持分の譲渡

持分の譲渡

持分というのは、社員の地位そのものという側面と、会社財産について有する「分け前」を示す計数上の額という財産的な側面があります。

この持分の全部又は一部を譲渡することにより、社員に変動が生じることになります。

例えば、社員がその持分の全部を第三者に譲渡した場合、譲渡した社員は退社することになり、譲り受けた者は新たな社員として加入することになります。

このように持分の譲渡は、社員の個性が重視される合同会社において大きな影響を与えるため、他の社員の全員の承諾がなければ行うことができません。

持分の譲渡に伴う社員の加入に当たっては、当事者間で持分の譲渡が行われ、他の社員全員の承諾と加入した社員に関する定款変更についての総社員の同意が必要であり、当該社員の加入の効力は、この定款変更の時に生じることになります。

なお、業務執行社員でない有限責任社員が、その持分の全部又は一部を譲渡する場合、業務執行社員全員の承諾があれば足ります。この場合、定款変更が必要であれば、業務執行社員全員の同意で行うことができます。

持分の相続、合併(一般承継)

会社法第607条に法律で定められた社員の退社事由が列挙されています。

その中に、死亡、合併(合併により当該法人である社員が消滅する場合に限る)が挙げられています。

つまり株式会社における株式のように当然相続される財産ではなく、社員の個性が重視された一身専属的な側面に重きを置く規定になっているといえます。

そして、第608条で、社員が死亡又は合併した場合、相続人や一般承継人が当該社員の持分を承継する旨を定款で定めることができるとしています。

このときの定款の定め方については、単に相続人が持分を承継するといった規定でも良いし、他の社員の承諾や相続人の意思を条件とするといった内容の規定でも良いとされています。

この定款規定がある場合、持分を承継した時に、社員となり、定款変更がされたものとみなされます。

規定のされ方が譲渡の場合と異なっています。